【魔法について】


魔法というものはどういったものであるか。


シンジの住む村から遥か北に、『恋人が出来る町』というものがある。

この町に滞在する者は、絶対に恋人ができるという。

それが男性の場合、本屋にて本棚に伸ばした手が隣の娘と重なったりするし、道を歩け
ば持病の癪でうずくまる娘に遭遇したりする。

それが女性の場合、親の再婚相手の連れ子が、同じクラスのムカつくけどちょっと気に
なるアイツで意に沿わぬ同居生活が始まったり、ふとしたはずみで異世界に飛ばされ、
その世界を救う巫女扱いされた挙句にそこの王子といい仲になったりする。

その町は、確実に恋人ができる町である。

そこで恋人ができた者は、記念に自分の名前の一文字を町の名に加えるという風習がある。

今では、町名が長くなりすぎてしまい、正確な町の名前を言うことができる者は一人と
していない。

町の入り口に掲げられた町名が書かれた看板は、どんどん文字が足されていくので、
今では隣町の中央噴水広場にまで到達しているという話である。


この状況は魔法なのかと、気の迷いからシンジがミサトに質問したところ、

『その町が魔法によるものか証明できないけど。そう思って間違いないでしょうね〜
 ほら、恋は魔法ってよく言うし?』

と、返された。

聞かなきゃよかったと苛立ったシンジは、食いしばりすぎて、奥歯を砕きかけた。