【魔術書について】
魔術書といえば、二年前に首都から大富豪がミサトの家に現れたことがある。
大富豪は、魔術書の蒐集家とのことで、
ミサトの持っている書物の中のとある一冊を売ってくれと言ってきた。
ミサトはその申し出に快く応じた。書物と同じ重さの金貨で譲りましょうと。
これは安い買い物と喜んだ富豪だったが、実際に魔術書を秤に乗せようとした
ところ、それは持ち上がらず、従者二人でも無理だった。
集まった村の男たち十人が梃子を使って、ようやく動かすことができるという重さで、
結局、大富豪は馬車いっぱいの金貨で魔術書を買い受けた。
懐具合の暖かくなったミサトは、その金で一ヶ月間、村をあげてのどんちゃん
騒ぎを繰り広げ、あっさりと金を使い果たしてしまう。
その後、シンジは何度も、あの金貨を十枚、せめて五枚は隠しておけば、
ここまで困窮することもなかったのにと、後悔している。