【ゲトゥムの猟犬】


ゲトゥムの猟犬は、視覚では認識できない。

彼らは、形而上にのみ存在し、形而下に存在するときは、常に人の後頭部あたりを走り
去る。

首を右に左に振り回せば、百回に一回ほどの確率で見ることは可能であるが。

見た瞬間が、その者の最後となる。

ゲトゥムの猟犬が獲物とするのは。

彼らを視認する者だからである。

なお、見た者は皆狩られて死んでいるので、姿形に関しては伝わっていない。


ちなみに酒蔵の娘であるアスカが、現在のようにシンジにからむようになったきっかけは、
ゲトゥムの猟犬を彼女が見てしまったことに起因する。

たまたま居合わせたシンジも巻き込み、どうにかこうにか猟犬の牙を回避することが
できたのは僥倖という他ないだろう。

ゲトゥムの猟犬を目撃した唯一の例外ということで、魔法研究機関「チューニッヒ学派」か
ら派遣された調査員に姿形に関する質問を受けた二人だったが、

アスカは「口はもうガーッで、目なんかもうグワワッて感じで、体つきはバキン!
ってなってたわ!」と、大変に抽象的な説明しか出来ず。

シンジはシンジで絵心が無いときているので、ゲトゥムの猟犬のイメージはまったく伝わら
なかった。

その日の夕暮れ、肩を落とし、とぼとぼと帰路につく調査員の姿が村人によって目撃され
ている。